こんにちは、サンライズweb担当です。
さて、前回は金属羽根と樹脂羽根の違いについてお話しましたが、今回はシロッコファンの設計についてお話をします。
当社はファンモーターの販売をしていますが、シロッコファンについては殆どの製品がカスタム製品です。ブロワーと呼ばれるタイプの送風ファンです。
静圧が高く、風量も多くとれます。シロッコファン(羽根)は羽根の枚数、大きさ、ファンの幅、ファン自体の大きさを変えることにより狙った特性のファンが作りやすく柔軟なカスタム対応が可能です。
当社のお客様は、空気清浄機や環境試験装置、加湿器など、送風ユニットを必要とされるお客様になりますが、業務用の機器になるため要求性能に特色があり市販品の(カタログ品の)ブロワーでは適合しないケースが多いです。
記事で解説していきます。
シロッコファンは色々な装置の送風ユニットとして使われていますが、当社が得意とするのは小型から中型のファンになります。
大きさとして羽根の外径が50mm~250mm程度の大きさです。羽根の幅は30mmから200mm程度です。
搭載される装置の大きさとしては家庭用冷蔵庫から物置位です。もちろん大風量が必要な装置から、庫内の空気循環・攪拌を目的とするものなど、いろいろありますが、シロッコファンは大体その程度の大きさです。ノートパソコン用の小型薄型のファンや大規模工場の換気システムなどはあまり経験がありません。
業務用空気清浄機、環境試験装置や恒温槽等熱源を持つ装置の内部温湿度の調整用にファンを求められるお客さんになります。
お客さんによって、弊社にご依頼する”設計”の範囲が異なります。
継続したお取引をさせていただいているお客様の場合、新機種を開発する段階で、現行のファンよりも風量を大きくとりたいとか、静かなファンが欲しいとか要求仕様が明確です。標準採用しているモーターの性能もこちらはわかっているので、今あるモーターで効率よく回せるファンを設計することになります。シロッコファンの羽根の新規設計だけで済むこともあります。
新規のお客様の場合、要求仕様が固まっていないケースが多く、一通りのヒアリングをさせていただいて、どの部分までお役立ちできるかの相談をさせていただきます。次のようなケースが多いです。
- 初めて装置の送風ユニット部分を開発をする。送風についての知見が無い、ファンやモーターを本格的に選んだことが無い、試作機では買ってきたブロワーを取り付けたが、最適な風量が得られているとは思えない、風量の計算もよくわからない。風量計算から必要なファンについてもアドバイスが欲しい。
- 装置内の排熱について、今までの機種では発熱が少なく、軸流ファンを複数個取り付けてなんとかなっていた。次の新機種では装置が大きくなり発熱量も大きくなる。装置内の密度も高くなり流路を確保できない、ブロワータイプは静圧が高くて良さそうだけど、使った経験が無い。
まず確認するのは、どのような装置なのか、どのような性能を狙っているのかです。
お客さんの装置がわかったらファンの種類を決めましょう。
送風用のファンは分類の仕方によって沢山ありますが、一般的なファンとしてあげられるのは3つです。
- 軸流ファン
- 遠心送風機(シロッコファン、ターボファン)
- クロスファン
それぞれのファンの特徴は以下の通りですが、羽根の形状や回転数により同じモーターで回した場合に必ずしも下記の通りになるわけではありません。 それぞれの構造やより詳しい説明はファンメーカーさんのHPにありますので、理解を深めることができます。
静圧が低く、管路抵抗があると風量が落ちやすい
管路抵抗が大きな場合でも風量の極端な落ち込みが無く、風量を維持する
今回はシロッコファンで話を進めますが、それではどれくらいの風量が必要でしょうか、まずはざっくりと計算します。風量計算の計算式はwebで探せば大体下記の式がでてきます。
出てきた値を1.3倍から2.0倍の間で乗じて負荷分を上乗せしておきます。(ここだけノウハウが必要ですが、迷ったら1.5倍しておけばいいでしょう。)これで大体どれくらいの風量が必要か分かります。
必要な風量を得るためのファンの開口寸法(管路の断面積)と風速を求めます。開口口が大きければ風速は遅くても良く、小さければ風速を早めなくてはいけません。トレードオフの関係ですね。装置に入る大きさにしましょう。
ダクト内の風量計算はJIS B 8330 に書いてあります。
弊社ではシロッコファンの羽根単体を一から設計することもできますが、通常シロッコファンの羽根専門メーカーに仕様を提示して、お客様の求めるスペックを量産性を考慮した適正な仕様にまとめるまでの構想設計をします。
ファンの外装は弊社で一から図面を引いて、板金加工メーカー、塗装メーカーに直接発注します。
ファンの種類、風量、ファンの開口寸法が決まり、大体の大きさが決まりましたのでシロッコファンの仕様を詰めていきます。
風量の調整は、シロッコファンの回転数、羽根の枚数、羽根の幅、羽根の径を変えることで増やしたり減らしたりすることができます。この中で一番風量に影響を与えるのは羽根の径です。羽根の外径は3乗(D^3)に比例します。
並行して進めますが、ファンの材質も決めなければなりません。シロッコファンの羽根はアルミや鋼板、SUS(304,430)が一般的ですが耐熱・耐蝕に強いインコネルを用いることもあります。
ファンケースの外装の仕様も決めます。耐熱性や耐蝕性、入手性を考慮して材料と仕上げ(塗装)の仕様を決めます。
シロッコファン(羽根の専門メーカー)と打ち合わせを進め羽根の詳細仕様が決めていきますが、大事なのが量産性です。お客さんの希望価格と購入予定数量から初期投資と量産性を考慮したシロッコファンのタイプ(作り方によるタイプ)も決めていきます。
今回はここまでにします。