軸流ファンの選び方

こんにちは、サンライズweb担当です。

さて、前回はシロッコファンの設計についてお話しましたが、今回は軸流ファンの選び方についてお話をします。

当社は一部海外製の軸流ファンも取り扱っていますが、多くは国内メーカーの高信頼性ファンモーターを扱っています。

用途は多岐に渡りますが、業務用の機器で装置内の空気の循環および排熱のために使われています。例えば業務用の冷蔵庫の場合、ファンの故障で冷却能力が失われていると中に入っている食品が全て傷んでしまいます。冷凍庫の場合、凍った食品が一度解けてしまうと廃棄せざるを得ません。

重要なデバイスですが、沢山のメーカーがあり種類も多いので基本的な考え方をお伝えできれば良いなと思っています。

記事で解説していきます。

軸流ファンの形状・サイズ

羽根が四角い枠に収まっているファン、丸い(八角形)の枠に収まっているファン、枠のないファン(インペラ)がありますが、軸流ファンと聞いて頭に浮かぶのが四角い枠に収まっているタイプでしょう。サーバーラックやデスクトップ型のパソコンについているあれです。

ファンケースのサイズは□60mm(60mm×60mm)~□180mm(180mm×180mm)位までの製品がラインナップされています。ケースの厚さは20mm~55mがあります。

軸有ファンで一番ポピュラーなのが□120mmサイズです。厚さは20mmと38mmが多いです。20mmはデスクトップ型パソコン、38mmはサーバーラックに使われることが多いです。

□120サイズの軸流ファンの性能

設計者で無くても目にする機会の多い□120mmサイズの軸流ファンですが勢い良く回っているあのファンは、どのような性能を持っているのでしょうか。

ローヤル電機の樹脂羽根AC軸流ファンUT120Cを例にとって説明します。バリエーションが豊富で売れ筋の標準的なファンになります。

UT120C 豊富なバリエーション
高速型、中速型、低速型
接続形式:二端子型、三端子型、リード線型
電圧:100V、115V、120V、200V、220V、230V
周波数:50/60Hz

さて、UT120Cですが、最大風量は高速型で50Hz 2.7㎥/min /60Hz 3.1㎥/minとなっています。1分間ファンを回して抵抗のない状態でどれくらいの風を送れるかという値になります。
家庭用の普及サイズの冷蔵庫が350ℓ位なので、1分少々で冷蔵庫位の体積の風が出るんだな、とイメージできます。
私がファンモーターを勉強し始めた時には、勢い良く風が吹いているからもっと多いのかと思っていましたが、意外と少ない印象を持った記憶があります。

ACモーターは、コンセントの周波数により、モーターの回転数が変わります。
関東地区が50Hzで関西地区が60Hzという話は聞いたことがあると思います。
軸流ファンの場合は、50Hz/60Hz両方に対応している製品が殆どになりますので、買ったけど使えなかった。(回らなかった、壊れてしまった)ということにはなりませんが、60Hzの方が回転数が高くなるため風量が多くなります。
60Hz地区で試作・評価して大丈夫だったけど50Hz地区に持ってきたら風量が不足してしまった、ということが無いようにそれぞれの特性を確認しておきましょう。

また、風のながれる経路(管路)に抵抗があると風量が落ちてしまいます。
風量と、抵抗があった場合の風圧の落ち具合のグラフはファンモーターメーカーのカタログに記載があります。下記の風量ー静圧特性というものです。

カタログの仕様の表とこのグラフをよく眺めて、必要なファンを選びましょう。

AC軸流ファンの回転数

UT120Cの回転速度は高速型で50Hz 2750r/min / 60Hz 3200r/minとなっています。つまりモーターに取り付けられたファンが1分間にそれぞれ、2750回転、3200回転しますよということです。大体一秒に50回転くらいですね。

交流の電気は、プラスとマイナスが切り替わる電気です。50Hzの場合、1秒間に50回プラスとマイナスが切り替わります。UT120Cは、磁石(N極とS極)が1対入っているので2ポールと呼ばれるタイプのモーターがついています。

計算上の同期速度は、50Hz×60秒=3000回転 60Hz×60秒=3600回転になるのですが、モーター自体の負荷、すべり、により、計算上の速度より低くなります。付加に対してトルクが十分であれば計算上の同期速度に近づきますが、電動機であれば必ず低くなります。

軸流ファンの回転数、羽根の厚さ、羽根の径と風量の関係

□120mmの軸流ファンの風量はイメージがつかめましたでしょうか。
いま□120mmの軸流ファンを使っていて冷却能力(風量)が足りない場合、選び直す必要があります。

風量を増やすには、つぎの3つの方法があります。

1:ファンの回転数を上げる
2:厚い羽根のファンを使う
3:羽根の径の大きなものを選ぶ

それぞれ、どれ程の効果があるのでしょう、順に説明します。

1:ファンの回転数を上げる

UT120Cは高速型、中速型、低速型がラインナップされています。
違いは回転速度です。
低速型:50Hz 2100r/min 2.0㎥/min
高速型:50Hz 2750r/min 2.7㎥/min
回転数が、1.3倍になり、風量は1.35倍になっています。概ね比例していますね。
それでは、静圧はどうでしょう。
低速型:50Hz 2100r/min 44.1Pa
高速型:50Hz 2750r/min 93.1PA
回転数は1.3倍ですが、最大静圧は2.1倍になっています。

ベリヌーイの定理より、回転数を2倍にすると、風量は倍になり、動圧は4倍になります。 全圧=動圧+静圧のため、メーカーのカタログ表記(最大静圧)を比べても2乗和になっていませんが、下記のように覚えておいて実務上は問題ありません。私がこの業界に入ってから困ったことは一度もありません。

ファンの回転数を上げる
回転数を倍にすると風量は倍になり、圧力は4倍になる

今回はここまでにします。