ACファンとDCファンの違い

こんにちは、サンライズweb担当です。

当社では、ACファンもDCファンも扱っています。初めてファンを選ぶ必要がでてきた方向けに、基本的な違いを説明したいと思います。
初めてファンを選ぶ方、電気は苦手というかたにでもわかり易いようになるべく専門用語を避けて説明したいと思います。

本記事で対象とするのは一般的な小型の軸流ファンです。
大きさは概ね□120×厚さ38mm程度までの小型ファンです。特殊なセンサーが付いた製品、中型~大型の軸流ファン、有圧換気扇まで対象を広げると一概に言えないことばかりになりかえってわかりにくい記事になりますので対象を絞りました。

記事で解説していきます。

ACファンとDCファンの違い

電源の違い

ACファンは交流電源、DCファンは直流電源で動きます。
AC電源は100V(50Hz/60Hz)の商用電源のコンセントが一番身近です。
ACファンにケーブルをつけてコンセントに挿せば動きます。


一方DCファンは直流電源が必要です。動かすために必要な定格電圧はファン毎に決まっていてカタログに書いてあります。当社の良く扱う小型のファンは、DC:5V、12V、24V、48Vがあります。それぞれに適した電源を用意して使うことになります。

注意
ACファンでも海外向けの定格115V、200V、220V、230Vのものがあります。ファンのカタログや銘板をみて、正しく使いましょう。また、同様に日本国内向けのAC100Vのファンは海外(200V等)では使えません。

外見の違い

ACファンとDCファンで外観の違いはあるのでしょうか、ファンが取り付けられた状態で、ぱっと見ただけでは分かりません。メーカーによって羽根の形に特長があり推測が付くことはありますが外観だけで一発で判別が付くような大きな違いはありません。

ファン単体でケーブル(端子)接続箇所で見分けが付くことはあります。ケーブル接続の場合、ケーブルが太かったらACです。ただしDCファンでも防水の被覆がかぶせてあったりケーブルの太さがわかりにくいこともあります。
確実に見分けが付くのは、ACファンの端子型です。ファンにケーブルが付いていなくて端子だけがついているのはACファンです。

電気のつなぎ方

ACファン、DCファンにはケーブルまたは端子が付いていることが分かりました。それでは電気のつなぎ方を説明します。

ACファンのつなぎ方

端子型(2端子)と三端子型がありますがそれぞれ専用のプラグコードがあります。ACファンとプラグコードをつないで反対側をAC100V電源につなげばファンが動きます。交流なのでケーブルの方向性はありません。

三端子型・・・・・・・3本目はG(グランド、アース線)です。つないでください。

DCファンのつなぎ方

DCファンからは、2本または3本のケーブルが出ています。
2本の場合、+と-です。3本目は回転センサーのケーブルです。センサーはつながなくてもファンとして正常に稼働します。

ACモーターとDCモーターの基本

ACファンとDCファンにはそれぞれ、ACモーター、DCモーターが付いています。
それぞれの特長について説明します。ファンの性格に関わるところを中心に説明しますので、モーターの詳細はいろいろと詳しく説明されているwebサイトを参照されると良いと思います。

ACモーター 昭和の扇風機、本記事で扱うACファン

最近は扇風機がない家庭もありますが、昭和の時代は高価なエアコンが買えずに扇風機で我慢をしたものです。いまでも昭和の扇風機を大切に使っている方もおられるかもしれません、ACモーターは寿命がとても長いです。ブラシがないので摩耗する部品は軸受けくらいです。ACモーターの寿命は軸受けのグリスの寿命と言われています。ACファンの期待寿命は機種や使われ方にもよりますが50,000時間くらいです。(残存率90%)

24時間、365日稼働し続けても6年弱持ちます、安全率を考えて半分の25,000時間で交換しても3年に一度の交換ですみます。実用上十分な製品寿命のファンが作れます。

最近はブラシレスDCモーターを搭載した扇風機の販売割合も増えてきましたが、価格は昔ながらのACモーターを搭載している扇風機の方が安いです。
ACモーターの特長として”安い”ということがあげられます。
ACモーターなので、コンセントに挿すだけで使えます、回転数は商用電源の周波数によります、関東(50Hz)と関西(60Hz)で回転数が変わります。
風の強さは、弱、中、強の3段階でした。ACモーターは細かく回転数を制御できません、モーターを開発するときに3段階程度に切り替えて使えるように設計することは出来ます。

ACファンモーターには3種類のタイプがありますが、本記事で扱う□120×厚さ38mm迄のファンモーターは、単相クマトリ誘導電動機になります。
・単相クマトリコイル誘導電動機
・単相コンデンサ型誘導電動機
・3相誘導電動機
MEMO
50Hz駆動の場合、無負荷回転数は、2Pで3000rpm、4Pで1500rpm
60Hz駆動の場合、無負荷回転数は、2Pで3600rpm、4Pで1800rpm
すべりは考慮しない

ブラシ付きDCモーター 玩具・おもちゃの扇風機

あまり電気やモーターになじみのない方でもミニ四駆や玩具に使われているFA-130モーターはご存じだと思います。小さくてパワフルでとてもいいモーターですね、価格もとても安いです。100円から200円で購入できます。
でも残念ながらこのタイプのモーターはおもちゃの扇風機を除いて、ファンには使われません。

理由は寿命がとても短いからです。ブラシ付きDCモーターには名前の通り”ブラシ”という部品が付いていますがこれが稼働中に摩耗してしまうためブラシの寿命=モーターの寿命となります。
FA-130モーターの寿命は分かりませんでしたが、ブラシ付きDCモーターの寿命は製品と使用環境によりますが、数百時間から数千時間といわれています。
冷却ファンのように常にモーターが回り続けている機器には向いていません。

期待寿命1,000時間のモーターでファンを作った場合
1,000時間 / 24時間 = 約42日
約1.5ヶ月で壊れるファンになります。これでは売れませんね。

ブラシレスDCモーター 本記事で扱うDCファン

ブラシ付きモーターは、安い反面ブラシの寿命がモーターの寿命を決めてしまいとても短いという話をしました。モーター駆動時に物理的に摩耗しているブラシの代わりに、電気信号で回転を制御するのがブラシレスDCモーターです。
回路、電子部品で構成された”ドライバ基板”で制御します。
ブラシが無くなったので、寿命が大幅に伸びました、DCモーターの寿命は軸受けのグリスの寿命か、基板のコンデンサーの寿命と言われています。機種や使われ方にもよりますが、ACファンと同じ50,000時間くらいです。
また、電気信号で回転を制御できるので、回転数が自由に変えられます。

ACファンとDCファン風量の違い

ACファンとDCファン送風に関する性能の違いを考えてみましょう。

モーターのサイズと回転数

ACファンでも、DCファンでも□120×厚さ38mmの軸流ファンを設計する場合、まず一番の制約が大きさです。小型のファンでファンの外形サイズが□120×厚さ38mmと決まっているので、とにかくこの中の真ん中当たりにモーターを配置して羽根を放射状にに配置するレイアウトをしなければいけません。

軸流ファンメーカーとしてはできるだけ、風量が多く出て、静圧が高く、騒音が少ない、消費電力も少ないファンをできるだけ安いコストで作りたいのですが、この位の大きさだとモーターと羽根の大きさが大方決まってしまいます。

モーターを大きくすれば、大トルクで回転数を上げることが出来ますが、モーターの径を大きくすれば、羽根が小さくなってしまいます。

反対に羽根を大きくすれば効率の良い羽根が作れますが、小さいモーターしか入らなくなってしまいます。

この大きさの範囲で効率が良く羽根にあったトルク特性のモーターを設計していきます。

ACモーターの場合、周波数(50Hz、60Hz)と羽根の負荷により同期回転数からどれだけ落ちたところを最大トルクにするか、設計します。
ACファンの場合、最大回転数は50Hzで3,000回転の10%~20%減:2,400~2,700rpm、60Hzで3,600回転の10%~20%減:2,900~3,000rpmとなります。

DCモーターの場合、ACモーターよりも効率が良いため、同じ大きさでもより力強いモーターが作れます。また、電圧を上げることで回転数をあげることが出来ますので4,000rpm以上の高回転モデルになるとACファンよりも明らかに風量・静圧の大きなファンとなります。ただし、騒音も大きくなります。

羽根の枚数、形状の話

メーカー、型番により、羽根の形状、枚数は様々あります。
羽根の枚数が少ない方が良いとか、多い方が良いとかは一概には言えません。
翼型:翼の断面によってどの回転数で効率よく空気を掻き出せるか変わってきます。カタログを見て、ファンとしての性能を確認するのが良いです。

ACファンとDCファンの性能

ファンは目的・用途に合ったものを選びますので、カタログ値を比較して優劣をつけるつもりはありませんが、ACファンとDCファンがどのようなバリエーションがあるのかをあまり詳しくない人にイメージしてもらえるように調べてみました。

ACファンでも、DCファンでも回転数が同じくらいであれば大体同じくらいの性能、DCファンは高回転モデルがあり、大風量を得られるが騒音は大きくなるということが分かると思います。

ACファン標準タイプ
50Hz使用時
回転速度 2,600~2,800rpm
最大風量 2.5~2.7㎥/min
最大静圧 57.9~93.1Pa
騒音   37~43dB

60Hz使用時
回転速度 2,900~3,250rpm
最大風量 2.9~3.1㎥/min
最大静圧 68.7~96Pa
騒音   41~46dB

DCファン
標準タイプ AC50Hzファンと同程度の製品
回転速度 2,600~2,800rpm
最大風量 2.8㎥/min
最大静圧 70~70.4Pa
騒音   39~40dB

標準タイプ AC60Hzファンと同程度の製品
回転速度 2,900~3,250rpm
最大風量 3.07~3.5㎥/min
最大静圧 100~117Pa
騒音   46~49dB

高回転型 3600rpm以上
回転速度 3.600~6.400rpm
最大風量 3.68~7.4㎥/min
最大静圧 129.9~520Pa
騒音   49~67dB

ACファンとDCファンの違い まとめ

その他の違いも合わせて、まとめてみます。

ACファン

電源:交流 50Hz/60Hz
羽根の形状が同じであれば、DCファンと同一の回転数であれば同じ風量/静圧になるが、交流電源の周波数(50Hz/60Hz)により一定の回転数になる。
理論値は50Hzで3,000rpm、60Hzで3,600rpmになるが滑り、抵抗、負荷とトルクの関係により実効値は50Hzで2,600~2,800rpm、60Hzで2,900~3,250rpm程度のファンになる。
ACモーターの単相クマトリコイル誘導電動機、単相コンデンサ型誘導電動機は同サイズのブラシレスDCモーターに比べ、効率が悪く力が無い反面、構造が単純なため製造コストが安い。

回転数の調整は基本的に出来ない。開発時から2段階、3段階に切る変えられるように設計してコイルから2系統、3系統のケーブルを引き出して、強、弱、または強、中、弱につなぎ替えることで変えられるが、線をつなぎ直したりスイッチで切り替えて配線自体を変える必要がある。□120サイズ以下の軸流ファンではこのようなタイプは製品化されていません。ACクロスフローファンでは多くの製品がケーブルのつなぎ方で風量が調整できるようになっています。

DCファン

電源:直流 5V、12V、24V、48V
羽根の形状が同じであれば、ACファンと同一の回転数であれば同じ風量/静圧になることは上記の通り、ACファンと同程度の回転数の製品は風量/静圧は同じレンジに収まると考えて良い。
DCファンは小型で強いトルクを発生させることが出来る。交流モーターよりも回転数の高い製品を作ることが出来るので、3,600rpm以上のファンであればACファンよりも明らかに風量の大きな製品を作ることが出来る。DCモーターは効率が高いので、消費電力も少ない。
電気信号で回転を制御するためドライバ基板が必要、製造コストはACファンに比べて高くなる。

回転数の調整が容易。
DCモーターの特長として負荷が一定であれば電圧の上下で回転数が変わります。ファンに流す電圧を上げたり下げたりすることで風量の調整が可能です。
DCファンのカタログには定格電流12Vの他に使用電圧範囲10.2~13.8Vといった記載があり、使用電圧範囲の中で調整することが出来ます。

見比べてみると、DCファンの方が利点が多いように見えます。
価格についても、DCファンの価格は大量生産によりドライバ基板の価格が安くなったこともあり、ACファンと大差の無い製品もあります。

ACファンとDCファンを考えるときにファン単体で比較してもわからない事情があります。それは、電源の取り方です。記事で解説を続けます。

ACファンとDCファンを使う上でのコスト

DCファンは、ドライバ基板が必要な分、ACファンよりも製造コストが高いけど、近年は価格差が少ない製品もあるというお話をしました。
それでは、実際にファンを組み込んだ製品を作る際に他にはどのようなコストがかかるのか、説明します。

ACファンの場合、AC軸流ファンと専用のプラグコードとコンセントプラグを買ってきてコンセントに挿せば、ファンを駆動できます。

DCファンの場合、装置の中でDC電源(回路)を持っていれば、そこから電気を取れば良いですが、ない場合ファンのためだけに小型のスイッチング電源をつけなければいけません。装置の中でファン以外に電気を使うものが無く、回路自体がない場合は、ACアダプターで駆動することになります。

記事が長くなりましたので一度ここまでをアップします。
それではまた。